今日は、大トラ第3中学校の保健室勤務の日。
どんな子ども達に会えるのかなぁ。
朝の時間に、出勤前に新聞を読んで、気分が悪くなった。神戸の私立高校の3年生の自殺にからむニュースの報道に、あまりにもショックで立ち上がれなくなった。被害者の子どもがどんな思いで生きてて人権を蹂躙されてきたか、と思うと、声をあげて泣いてしまった。なんとむごい事件だろう。そして、いじめも、インターネットが普及するにつれて、だんだんと陰湿化して残酷になってくる。どうして、こういうことが起こるのか、他者の皮膚の痛みを分かれない子どもが増えていくのは、どうしてか。いじめの被害者は、あまりにもむごい殺され方をしていきて、そのたびに報道されるのに、いっこうに改善されない。暴走する子どもの心は、暴力と罰でしか鎮静することができないのであろうか。
その隣には、東京足立区での学力テストの結果不正の件に関するニュース。こんな教育を行う大人がいるから、子どもたちも、荒れてしまうのだろうか。心の教育だとか、叫びながら、ちっとも心を教育していない馬鹿な教育委員会とか、校長とか、許せない気分だ。
そんな、重たい気分で、出勤。
初めての保健室。
約束の時間にはいると、なんと誰もいないはずの保健室には、先客が。授業もはじまっているにに、だらしなくソファで談笑している、3年の女子3名。それを完全に無視して、いらいらしているような様子で事務仕事をしている若い女性教師。携帯を出して電話をかけ、ファッション雑誌を出して、読んでいる。さかんに、芸能人の話をしている。
引継ぎによると、この保健師には、1人の自閉症傾向の男子以外保健室登校はいないはず。なんで?
やんわり、注意すると、生徒らは、冷たい目をしてにらんだあと、しばし無視。
「だれ?あれ?なに?むかつく!」と、ひそひそ。
(そうきたか?勝手にせい!)と、頼まれた健診のデータ記録の事務仕事をしていると、やかましくなってくる。
「おはよう!ねぇ、あなた達どうして、保健室にいるの?私は今日だけの保健の先生だよ。よろしく!」
「海野(私にこの仕事を依頼してきた養護教諭)が、いつもいいていってるもん!」
「そういう話は、きいてない!この保健室には、病気や怪我以外の生徒は退室させるように、聞いているの。どこも悪くないのだったら教室にもどりなさい。それと、携帯電話や雑誌は、許されているの?」
独りの生徒、突然、ケータイを取り出して、どこかに電話をかける。
「あぁーあたし!あんさぁ、今保健室いるんだけどさぁ、変なおばさんがきて、出てけって!チョーうざいんすけど!」
(こうきたもんだ!)
私、「どこにかけたの?親?」
女生徒「海野。今日は留守番のおばさんのいうこときけとさ!信じられない!」
(はぁ?)
私は、海野先生の脅迫観念のような催促に、しぶしぶ先に決まっていた別クチの仕事を動かしてまで、今日の臨時を請けたのに、なんだ、このありさまは!こっちが信じられない!
とにかく、今日一日だけの辛抱。やるべき仕事をまずやろう!と思ったけれど、あまりにも騒がしい。まるで、ゲーセンか、コンビニ前で、宴会でもやっているような集団である。
若い女性教師、何の対処もなく退室。(へっ?)
しかし、少し話でもきいてやるか?どうしてこういうことになっているんだろうか?そばにいって、色々質問をこころみたが、会話にならない。断片的に、2人は、親がいるが、一人は施設から通学してきて昼夜逆転生活をしているらしい。さかんに親や担任の先生を罵倒している。そこは、ぞれぞれの少女の担任が様子を見に来る。
「ばか!はげ!うざ!消えろ!死ね!」と、さんざん言葉で教師をいじめまくる。それにむかって何も言わないフレンドリーな先生方。びっくり!
そこへ持ってきて、様々な3年女子がなだれ込んで、そこに加わりはじめる。何人かは、体調を不良を訴えて、授業を休みたいと言い出す。本当に具合が悪そうな3人をベッドでやすませ、もくもくと本を読む自閉症の男子にときどき声をかけながら、あくせく世話をしている私の背中に、聞こえてきたのは、けたたましい罵声と悪口の嵐だ。
私は、エミールから散々、訓練を受けているので、何を言われても、まったく応えない。それに、この保健室も今日だけなもんで。しかし、その女子集団のせいで、おびえてゆっくり休養がとれない生徒の様子をみてとるやいなや、堪忍袋の緒がきれた!あんたら、この病める子ども達の当然の権利をうばうことなんか許されないわ!今朝の新聞記事のこともあり、ぶっちぎれた!
「あんたら、いい加減にしな!あんたらに何をいわれても慣れているから大丈夫だよ!でも、保健室は、あんたらの遊び場じゃないんだ!具合の悪い人たちのものだ!そして、あたしは、そのひとたちの世話をしている。仕事をしている。真剣なんだ!でっていって!いるんなら、他の人の迷惑にならないように静かにしろ!」
そこへ、金髪に顔ピアスの不良少年登場。別の不良うつ病少年登場。
さぁて、どうなるか!集団ではむかってくるか!きてみな!
と、仁王立ちになってにらみつけていると、
案外素直に、そそくさに出っていった。ドアとバタン!と思い切り閉めて。仲間のうち2人は残る。それも静かにしている。金髪は、「ごくせん」を読んで何もいわない。
「ねぇ、臨時のおばさん!」と、残った女子不良。
「3中って、こういう感じだよ。先生何もいわないもん。」
「先生、かっこいいね。」(極せんになった気分)
結局残った不良女子とは、話が弾む。金髪や欝の男子とも、まぁまぁ。
休んでいた病人たちには、「ごめんね!もう大丈夫だからね!ゆっくりやすみなよ!」 不良女子どもは、それをじっと見ている。
そのうち、不良ではないが、サボり組みがぞろぞろと来室。
(この学校、保健室登校いなかったんじゃないの?)
「こういう状態、いつもだよ。海野が好きだからな。」
保健室の先生は、ここでも人間関係を築いて、人気なんだな。
でも、たしかに、こんなに荒れているとは話を聞いてなかったはず・・・それに、私の給食は用意されてなくて、ナンだ、この学校は!たいていは、養護の先生が、きちんと手配をして、校務技師さんが、世話を焼いてくれる。ここの職員室の雰囲気の悪さ!管理職や先輩が若い教師に嫌味をいう。若い教師は、管理職の悪口を私のような臨時に平気でこぼす。どの教師も怖い顔していて挨拶すらしない!なんだ、ここは!
極めつけは、放課後の下手に刺青だらけの少年の登場。顔中ピアスと茶髪。だらしない私服。その少年が突然無言ではいってきて、ばたりと、保健室のベッドにへたりこむ!な、な、な、なんだ!寝返りをうったとたん、たばことライターがポッケから落ちる!
「君、だあれ?ここは、学校だから!学校の保健室だから。友達の部屋じゃないから、そういうのやめて!」
「そいつ、めったに学校こないやつ!だから、来ただけでありがたがられて、何でもありなんだ!」と、うちとけた不良女子が教えてくれる。
「今まで、何してたの?」
「寝てた、朝方に寝たから。」
「夜何してたの?」
「遊んどった。」
「そんなお金どうしたの?」
「先輩とかに、もらった。」
「働いているの?」
「テキ屋やったり、解体屋したり、でも、だるい。やめた。」
「この刺青どうしたの。」
「自分で彫った。こっちは、先輩がした。」
「いたくなかった?」
「別に。消したかったら根性焼きでとる。」
「今まで、悪いことしてきた?」
「何でもやった。今、傷害で裁判中。判決がでれば少年院へいく。よければ、ホゴカン(保護観察処分)」
(隣で、不良女子が「本当だよ。」と、確証してくれた。)
「クスリはやめとき!」
「ガスはやってる。めちゃ気持ちいい。」
「暴力団は、入るなよ。自分を大切にするんだよ。地獄だよ。」
「うーん!でも、先輩がいうには、結構上のほうになれるっているから。やさしいし。」
「高校は?」
「小学校からこうだから、まったくわからないし。」
「小学校から刺青なんだ!」
「まぁね!」
「あんただって、いずれ好きなひとができて、恋をして結婚するんだよ。子どもだってできるよ。そのときのためにも、自分を大切にするんだよ。自分の命を守らなければ・・・・」
「なんか、ふたり盛り上がってるジャン!」、の茶々をいれられて、私は、われに返る。刺青少年は、案外素直に質問に答えてくれる。見ためより、ずっと素直だ。ただ、とにかく愚かなだけ。
ただ、この少年少女たちの世界なら、同級生をいじめ殺すくらいのこと、平気でできそうな、そんな価値感をもっている。
「いじめはいけない!」
「はぁ、何いってんの?」
の雰囲気である。
教師ドモが、保健室に不良らのご機嫌取りにやってくる。
とにかく全員が去ってしまったあと、残った事務を片付けて、
(ここの仕事2度と受けない!)と、誓って学校を出た。
「失礼します。」の挨拶に、誰も教員は、応えない。
こんな教師ドモだから、こどもたちが荒れてしまうのか。子どもが荒れて教師が無気力になったのか。わからん!
それにしても、一部の不良女子以外の女子と、会話しながら、つくづく愛らしい憂いをきいた。
「地球ってどうなるの?滅びるの?」
「大丈夫だよ。滅びない!あんた達にかかってる!」
「どうして戦争になんか、なるのかぁ。戦争やだし!」
「そうならないために、力をつけるために、今勉強してるんだよね!」
「先生ってどういう仕事しているの?担任もつ先生じゃないの?もう、こないの?きて欲しい!毎日きてほしいよね。」
「ありがとう!そのほめ言葉うれしいよ!」
「他の中学もいっているの?他ってどんなかんじ?3中より悪いところある?」
(ないよ)
「みんな、がんばろう!嫌なこともあるんだけれど、地球を守るために!」
くさいセリフにも こっくりうなずく14歳の生徒。
「うち、地球温暖化やだから、エアコンがまんしてねてるんだ!」
「本当だね!先生もがんばるよ!」
このさわやかなやりとりが、唯一のお土産だった。
古い校舎を、あとにした。
やれ、やれ。
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